グランビルの法則とは【FXのテクニカル分析の基礎をわかりやすく解説】

グランビルの法則とは、エントリーポイントを移動平均線とレートとのかい離・収束で説明するものです。この法則は明確なエントリーポイントを示すものではありません。しかし「現在のレートは長期的に見てどのような環境なのか」「短期的に見てどのような環境なのか」を把握して環境認識をする上で重要な要素になりえます。また、この法則は「大きな時間足の方向に逆らわず、短期足でタイミングを計ってエントリーする」「長期足とは逆方向になるが、短期的な逆行を狙ってエントリーする」といったトレードにおいて、移動平均線に対するレートの状態を言語化することができます。この記事ではグランビルの法則の説明と、実際のチャートを使用しての解説をしていますので、是非ご覧下さい。

【グランビルの法則】概要説明

グランビルの法則-提唱者について

提唱者:ジョセフ・E・グランビル(Joseph Ensign Granville)(1923/8/20-2013/9/7)

職業:金融アナリスト

グランビルの法則-内容について

①~④が買いポイント、⑤~⑧が売りポイントになります。レートは移動平均線(MA)に対してかい離と収束を繰り返します。①~③と⑤~⑦はかい離を狙うもので、④と⑧は収束を狙うものになっています。チャートを見る時、その時のMAとレートの位置関係から「今がかい離を狙う値動きなのか」「収束を狙う値動きなのか」という視点を持つと、値動きの把握が容易になります。

グランビルの法則-買いポイントについて

買いポイント①上昇トレンドの始まりを、割安な価格で捉えることが可能

買いポイント②③上昇トレンド中において、新規の買い注文に乗る形でエントリーが可能

買いポイント④下降トレンド中に、移動平均線のかい離からの収束を狙うポイント

グランビルの法則-売りポイントについて

売りポイント⑤下降トレンドの始まりを、割高な価格で捉えることが可能

売りポイント⑥⑦下降トレンド中において、新規の売り注文に乗る形でエントリーが可能

売りポイント⑧上昇トレンド中に、移動平均線のかい離からの収束を狙うポイント

複数時間足での活用方法について

トレードの確度を高めるために重要なのは、チャートを複数時間足の目線で見られるかどうかです。長期足及び短期足において、それぞれの時間足での値動きをグランビルの法則に当てはめて考えることで、相場状況を認識しやすくなります。ここではまずフラクタル構造の説明をした後に、グランビルの法則の実例を解説します。

相場の構造がフラクタルであることをイメージする

まずフラクタル構造を簡単に理解するなら、「複雑な図形を拡大しても、同じように複雑な図形に見える」と認識すれば良いと考えます。

まず通常の図形を例に挙げると、ギザギザした線の場合は拡大していくと直線にたどり着きます。

一方フラクタル構造とは、画像を拡大しても同様の構造が現れます。

上の図はドル円の日足チャートと1時間足チャートです。もし相場の構造がフラクタルでなければ、日足チャートを拡大した1時間足チャートは滑らかな直線状になります。しかし日足でも1時間足でも外観に変化はありません。もちろんこれを15分足にしても同じで、相場の波はどこまで拡大しても複雑な形状に変化はありません。そのため長期足・短期足はそれぞれ個別で分析を行い、「長期足の目線」「短期足の目線」をそれぞれ把握することが要求されます。

複数の時間足で見るグランビルの法則

「長期足の目線では上」「短期足の目線では下」と言われても、何を見て判断すれば良いのかわからない人も多いと考えます。そこで活用したいのがグランビルの法則です。

下の図は日足チャートに短期(25期間)、中期(75期間)、長期(200期間)のSMAを表示したもので、それぞれのSMAでの反応をグランビルの法則に当てはめたものです。

このチャートは短期的に下降トレンドから上昇トレンドに転換し、中期的には下降トレンドが終焉を迎えた状態です。上の図からわかるように、短期には短期、中期には中期といった期間ごとの値動きがグランビルの法則によって説明ができます。「トレンドに逆らわなようにエントリーをする」と一言で表したとしても、「長期的には下降トレンドであるが、短期的な上昇を狙って買いエントリーをした」もトレンドに逆らっていません。重要なのは「どの規模のトレンドに従うか」を理解することであり、これを理解できればトレードの根拠を見い出すことができます。

移動平均線の設定値を「揃える(そろえる)」という考え方について

先ほどの例では短・中・長期のSMAを25・75・200の設定で解説しました。この設定値には厳密な決まりがなく、多くのトレーダーが似たような数値を使用しているとされる設定値を選択しました。次にその設定値を各時間足で「揃える」という考え方を紹介します。

移動平均線の設定値について

設定値には「この数値が最も適しています」という様な数値は存在しません。しかしすべての時間足において設定値を揃えることは有効だと考えています。今回は例として設定値を20に揃える場合の、各時間足の設定値を下記にまとめます。(MA:Moving Average)

例えば15分足をトレード足とした場合、80期間と320期間のMAを表示させることで、1時間足20期間及び4時間足20期間に相当するMAを確認することが可能です。そして1時間足チャートで80期間と480期間を表示させることで、4時間足20期間及び日足20期間に相当するMAを確認することができます。このように期間設定を揃えることで、他時間足のMAの把握が容易になります。どの規模のMAを設定するかはトレーダーによって異なりますが、自分のトレード足より1段階、及び2段階上位の時間足で20期間前後に相当するMAを表示させると見やすいと考えます。

設定方法について

次に設定方法について説明します。

先ほど上図では15分足に80期間と320期間のMAを表示したように、MT4では各種移動平均線(SMA,EMA等)を、指定した時間足に自由な設定値で表示することができます。

ここではSMA(単純移動平均線※MT4上ではMAと表示)の80期間と320期間を、15分足チャートのみに表示する場合を例にします。

MT4上のツールバーから「挿入」→「インディケータ」→「トレンド」→「Moving Average」を選択します。

 

「パラメーター」画面で期間やMAの種類、スタイルを選択します。

「表示選択」画面で、表示したいMAの時間足を選択します。この時「すべての時間足に表示」を選択した場合は、すべての時間足に同じ期間設定のMAが表示されます。

揃えた移動平均線を用いて、「グランビルの法則に当てはまっているか」を観察する。

では、揃えた自動平均線を用いてグランビルの法則を活用してみましょう。

下の図は2020/2/14-2/19のユーロドル4時間足チャートと15分足チャートです。この図を用いて複数時間足での目線について説明します。

今回の例では、4時間足チャートを見ると下向きに傾いた20SMAに反発する形でレートが下落しています。この下方向への反発を15分足で見てみると、レートは80SMA(H1/20SMA)に複数回抑え込まれた後に下落しています。4時間足だけを見ると単純に20/SMAに反発して下落していますが、それを拡大して15分足で見た場合は、数時間のレンジを形成した上で最終的にSMAが下に傾いて反発したことがわかります。この記事の冒頭の表の言葉を用いると、4時間足の反発は⑦の「MAが下向きの状態で、レートが戻りを形成して反転した状態」に該当します。そして15分足の反発は、⑤⑥⑦が複数回発生しています。

今回は解説記事のため完成したチャートを使用して説明しました。しかし実際のトレードでは当然ながら将来の値動きがわからない状態でチャートを見ることになります。複数の時間足を把握しようとすると、様々な情報が視界に入って分析の確度が鈍る可能性があります。しかしその場合も今回の例と考え方は同様で、グランビルの法則を理解している人は「4時間足20SMAが下向きで、1時間足20SMAも横向きから下向きに変わりそうだから、15分足では下目線でのエントリーポイントを探ろう」という認識を持つことができます。

このようにグランビルの法則を理解すると、チャートの値動きを言語化して把握することが可能になります。そしてこの目線(相場観)を持つことができれば、初心者の領域から抜け出せると考えられます。

移動平均線の設定値は、25・75・200のように設定するのか、それとも各時間足の20期間等に相当する設定値を選択するかはトレーダーによって異なります。まずは自分が見やすい設定を見つけましょう。

環境認識とは

よくFXに関するネットや書籍で「環境認識は大切」という言葉を目にしますが、その方法や考え方は多種多様です。では、環境認識とは具体的に何でしょうか。その解答の1つとして、このグランビルの法則を用いた目線の固定が挙げられると考えています。

・「長期足ではSMAは下向きにあり、レートとの反発を狙う」「短期足でSMAが下に傾くのを狙ってショートエントリーをする」

・「長期足ではSMAは下向きにあり、レートは大きく下にかい離している」「短期足でSMAが上に傾くのを狙ってロングエントリーをする」

上記のように「このトレードは長期的にはSMAのかい離と収束のどちらを狙っているのか」そして「短期的にはSMAのかい離と収束のどちらを狙っているのか」を把握することは環境認識に繋がります。そのため、このグランビルの法則とはトレーダーにとって各トレードにおける根拠をもたらしてくれるものだと考えています。