エリオット波動とは【エリオット波動の解説と、トレードでの活用方法について】

エリオット波動とは、ダウ理論の進化型と言って良く、チャート分析をする上で非常に重要な要素となります。ここではエリオット波動の概要に加えて、チャートを使用して実践的な解説をしますので、是非参考にして下さい。

 

【エリオット波動】概要説明

提唱者

ラルフ・ネルソン・エリオット(1871~1948)

【エリオット波動】原則

原則①2波目の終点が1波目の起点を下回らない(上昇トレンドの場合)

原則②3波目が1波目と5波目と比較して「最も短い波」にはならない

原則③4波目の終点が1波目の終点を下回らない(上昇トレンドの場合)

原則①③は下降トレンドの場合は反転します。上記の原則を含めて、エリオット波動の概要を以下で解説します。

【エリオット波動】概要

エリオット波動を簡潔にまとめると、「相場(上昇時)は5つの上昇波と3つの下降波で1つの周期を形成する」という考え方です。まずはこのエリオット波動で示される「5つの上昇波と3つの下降波」を図で説明します。

上記のように、エリオット波動は「推進5波と修正3波」と呼ばれており、特に上昇③と上昇⑤が伸びる傾向にあります。しかし、このエリオット波動は多少の慣れが必要で、慣れていない人が見ると「どれが上昇1波目で、どれが上昇3波目なのか」がわからない可能性があります。そのため、ここではそれぞれの波の特徴と、波の定義について解説します。

上昇1波目

下降トレンドが終焉を迎えるものの、まだこの時点では上昇波が伸びることを予測することは困難です。下降トレンドの継続を想定した売り注文が多く残っている場合があり、大きく伸びずに短命で終わるケースが目立ちます。下降トレンドの調整波と同じ波を示しており、上昇1波目を形成中の段階では、それが「上昇1波目になる」と判断することは困難です。上昇3波目を形成するタイミングで、第1波を認識できるようになります。

上昇2波目

上昇2波目が上昇1波目の起点を下回った場合は下降トレンドの継続になります。上昇2波目が1波目の起点より上で止まるからこそ「安値切り上げ」となり、上昇3波目につながります。そのため上昇2波目は、その値動きを獲るトレードをするのではなく、上昇2波の終了を何らかの要素で判断し、次の3波目に乗る準備をすることが有効となります。

上昇3波目

通常、最も力強く伸びる波になります。第2波の終点で安値を切り上げ、第1波終点(第2波起点)のネックライン※を上にブレイクしたことで、それまで下降トレンドに乗る形でポジションを保有していたトレーダーの決済(利確・損切り)を巻き込んで大きく伸びます。それまでの下降波を支えていた売り注文のポジションクローズ(買い決済)と、下落が終わったと判断した上目線のトレーダーによる買い注文が重なることで、この上昇3波目は上昇トレンドの中で最も伸びる傾向にあります。

※ネックライン:安値の切り下げに失敗した起点から水平に引いたライン

上昇4波目

上昇3波目を形成したトレーダーの決済注文と、その3波目がまだ伸びると見込んだトレーダーの買い注文が交差することで、複雑な値動きをする可能性があります。また、上昇4波目の終点は上昇1波目の終点を下回らないことがエリオット波動の原則となっています。5波目の上昇でのエントリーを狙うトレーダーは、この4波面の終了を判断する必要があります。その時は2波目の終了を判断して3波目を狙った方法と同様に、4波目をトレード足より小さな時間足で確認することが有効だと考えます。小さな時間足にすることで4波目を下降トレンドとして認識し、その下降トレンドの終了を判断してエントリーすることで5波目に乗ることが可能です。

上昇5波目

第3波程の力強さはないケースが多いです。第3波を形成したトレーダーの利益確定による決済や、上昇トレンドの終了を想定しているトレーダーによって、上方向への推進力は低下します。また、5波目が小さい程、それを見ているトレーダーも上昇トレンドの目線を切り替えて下降トレンド目線になります。上昇5波目を狙うのであれば、3波目から続いた上昇トレンドが反転して下降トレンドになるリスクを念頭に入れてトレードをする必要があります。

下降1波目

ここまで続いた上昇トレンドを下から支えていたトレーダーの利確、そして売りポジションを持つトレーダーが増えることが重なってレートが下降してきます。ただし、この時点ではこの波が「下降1波目」であると断定することは難しく、上昇5波目の大き目の戻しなのか、それとも下降1波目なのかは後になってから判明するケースが多いです。下降1波目の時点では、まだ上昇トレンドが完全に終了したと判断する要素に不足があるため、「下目線に切り替わる可能性がある」としてトレードを見送るのが良い判断かもしれません。

下降2波目

下降2波目の最大の特徴は、これまで継続していた高値の切り上げが、初めて失敗に終わることです。上昇の3波目と5波目が既に出現しており、加えて下降1波目が明確に目視できる規模であった場合、この時点で上昇トレンドの終了を想定するトレーダーが増えます。賢明なトレーダーであれば、この時点で「下降2波目の切り返しを狙い、下降3波目に乗る売りエントリー」もしくは、「下降3波目が終了して再反転を確認した後に、再度発生する上昇3波目を狙って買いエントリー」の点を想定していると考えます。下降2波目はエントリーする波ではなく、あくまで「下降2波目の終了を判断して、下降3波目に乗る」準備をすることが重要だと考えているトレーダーが多い傾向にあります。

下降3波目

 

下降3波目は、下降2波目がこれまで継続していた高値の切り上げを初めて失敗に終わる「確定」をする波になります。高値の切り上げの失敗を確定するのは、上の図のAのラインを下に抜けることで、もしこのラインを下に抜けなければ、まだ上昇トレンドは継続中と判断できます。これまで継続していた上昇トレンドを支えてきたトレーダーは、下降2波目が高値を切り上げるかどうかを観察しています(厳密には、この時点で「下降2波目」なのか「上昇5波目」なのかは判定できない)。上昇3波目をしっかり獲ったトレーダーの決済ラインはAの位置に集中しているケースが多く、このラインを下に抜けることで、買いエントリーのクローズ、つまり売り注文が一気に加速します。また、売り目線のトレーダーによる新規の売り注文も入ることから、下降3波目は大きく下に伸びる性質を持ちます。この原理は上昇トレンドにおいて上昇3波目が上に伸びることと同じです。

 

【エリオット波動】トレードでの活用方法について

ここまでエリオット波動の概要について説明をしてきました。どの波を獲るのかはトレーダーによって多様ですが、最も有益を伸ばせるのは3波目に乗ることです。では、「3波目に乗る」とは、いったいどうすれば良いのでしょうか。ここでは、その3波目に乗る方法についてを紹介します。

エリオット波動「3波目」に乗るために必要なこと

トレード足が15分足だとした場合、下降トレンドが反転して上昇トレンドへ切り替わり、その3波目を狙ったとします。(下図)。しかし上昇2波目の終盤にレートがあるとした場合、自分が狙う波が想定どおり顕著に伸びるか(A)、それともすぐに再反転して下落してしまうのか(B)はわかりません。

では、Aのように伸びやすいケースとは、どのような状況でしょか。それは、「上位足のローソク足は、上に伸びやすい状況が整っているか」がポイントになります。つまり、15分足クラスのトレンド転換からの3波目を獲る場合、4時間足クラスでも3波目・5波目にレートが位置していることが重要になります(下図)

4時間足が安値を切り上げる領域で、15分足が小規模の下降トレンドからの反転を見せる時、4時間足で買い目線のトレーダーと、15分足で買い目線のトレーダーの思惑が一致します。また、この場面では、15分足規模の下降トレンドを形成してくれた売り目線のトレーダーがポジションを閉じるタイミングでもあるため、売りポジションの決済注文で買い注文が重なります。

①15分足でのトレンド転換を狙った買いエントリー

②4時間足で上目線を継続しているトレーダーの買いエントリー

③15分足で下降トレンドが終了したと判断したトレーダーの売りポジションの決済(買い注文)

上記3種類の思惑が一致することで、15分足のエリオット波動「第3波」は伸びやすくなります。つまり、自分のトレード足よりの上位のトレード足でも同じ方向に注文が集中しているかを観察することが重要となります。また、よく「FXでは環境認識が大切」と聞きますが、この「上位足でも同じ方向に注文が集中しているか」を観察することが、環境認識に相当します。

まとめ

以上でエリオット波動の説明を終わります。要点をまとめると、最重要項目は下記の3点です。

・最も伸びるのは3波目

・自分のトレード足より上位のトレード足でも同じ方向に注文が集中しているかを観察することが重要

・自分のトレード足より上位のトレード足でも同じ注文が入るかを検討する場合、買いエントリーを検討しているのであれば「大きな時間足が安値切り上げが成立する領域」、売りエントリーを検討しているのであれば「高値切り下げが成立する領域」での短期足の反転に注目する

是非チャートを見る時は、エリオット波動を意識するようにしてみて下さい。