ロスカットとは【ロスカットの計算方法と防ぎ方をわかりやすく解説】

ロスカットとは、ある通貨を保有している状態で含み損が一定の水準に達した時、自動的に強制決済をするシステムです。(一方、FX会社によって強制的に決済されるのではなく、自らポジションを決済することを「損切り」と言います。)強制決済と聞くとネガティブな印象を持たれる人もいるかもしれませんが、むしろ逆です。ポジションを自動的に強制決済するロスカットは、損失の拡大を防ぎ、最低限の資金を温存する役割を果たします。FXトレードをする上で、ロスカットの理解は必須です。ロスカットを理解せずにトレードをするのではなく、理解した上で適切な対応を行うことが、安定的なトレードに繋がると考えます。このページでは、ロスカットについての概要や計算方法、そしてロスカットの防ぎ方についてを解説します。

 

ロスカットの仕組みについて

ロスカットの条件

ロスカットが執行される条件は「証拠金維持率が一定の水準を下回った場合」であることが一般的です。また、このロスカットの水準を決定する証拠金維持率は、各FX会社によって異なります。

・DMM FX 証拠金維持率50%以下

・GMO クリック証券 証拠金維持率50%未満

・LIGHT FX 証拠金維持率100%以下

・外為どっとコム 証拠金維持率100%以下

自身の使用するFX会社のロスカット条件は、是非一度ご確認下さい。

 

ロスカットの計算方法

ここではロスカットの計算方法と、その計算式に現れる他の項目(必要証拠金等)の計算式も解説します。

必要証拠金の計算方法

必要証拠金は、新規でポジションを保有したり、そのポジションを維持するために必要最低限の金額を意味します。

必要証拠金(円)=(為替レート ×通貨数量)÷ レバレッジ倍率

 

有効証拠金の計算方法

有効証拠金は資産評価額や純資産と表現されるもので、口座資金(預託証拠金)にその時点での含み損益を加えたものです。

含み損益(円)=(現在の為替レート – 注文時の為替レート)×通貨数量

有効証拠金(円)=預託証拠金(円)+ 含み損益(円)

 

証拠金維持率の計算方法

証拠金維持率は、上記の必要証拠金と有効証拠金の比率を表したもので、以下のように計算されます。

証拠金維持率(%)=(有効証拠金 ÷ 必要証拠金)× 100%

 

証拠金維持率は必要証拠金に対する有効証拠金の比率を表しているため、数値が高いほど、より安全な資金管理のもとトレードをしていることになります。先述の通り、この証拠金維持率がFX会社が指定する水準を下回るとロスカットが執行される仕組みとなっています。自身が保有するポジション数、及び為替レートの急激な変動には十分注意しましょう。

 

ロスカットの発生事例

では次に、100万円の資産を保有するFX口座において、トレードを試みてロスカットが発生するまでの流れを説明します。

※スプレッド等の手数料は省略して説明するため、数値の詳細部分は多少ズレの誤差が生じます。数値は計算上の概算になるため、実際の数値とは少し誤差が生じることを予めご了承下さい。

※ロスカットの水準を、証拠金維持率100%以下と仮定して説明します。

①エントリー前

口座残高1,000,000円
必要証拠金0
約定評価損益0
純資産額1,000,000円
証拠金維持率-

 

②ロングエントリー(買いポジション)で200,000通貨保有した場合

1ドル/100円だと仮定して、ドル円を200,000通貨(ドル)を購入(買いポジションを保有)したとします。この場合は必要証拠金が800,000円となり、証拠金維持率は125.0%となります。

必要証拠金(円)=(為替レート ×通貨数量)÷ レバレッジ倍率

1ドル/100円×200,000ドル÷25=800,000円

証拠金維持率(%)=(有効証拠金 ÷ 必要証拠金)× 100%

1,000,000円÷800,000円×100%=125.0%

口座残高1,000,000円
必要証拠金800,000円
約定評価損益0
純資産額1,000,000円
証拠金維持率125.0%

 

買いポジションで200,000通貨(ドル)を保有した状態で、相場が下落して含み損が100,000円発生した場合

レートが購入時の1ドル/100円から1ドル/99.5円になると、ロスカットが近付きます。

評価損益額=1ドル/100円×200,000ドルー1ドル/99.5円×200,000ドル=100,000円

必要証拠金=1ドル/99.5円×200,000円÷25=796,000円

証拠金維持率(%)=(1,000,000円-100,000円)÷796,000円=113.0%

口座残高1,000,000円
必要証拠金796,000円
約定評価損益-100,000円
純資産額900,000円
証拠金維持率113.0%

 

④買いポジションで200,000通貨(ドル)を保有した状態で、レートがさらに下落してロスカットが発生する場合

レートが購入時の1ドル/100円から1ドル/98.9583円まで下落するとロスカットが執行されます。

評価損益額=1ドル/100円×200,000ドル-1ドル/98.9583×200,000ドル=208,340円

必要証拠金=1ドル/98.9583円×200,000円÷25=791,666円

証拠金維持率(%)=(1,000,000円-208,340円)÷791,666円=100.0%

口座残高1,000,000円
必要証拠金791,666円
約定評価損益-208,340円
純資産額791,660円
証拠金維持率100.0%

以上が、ロスカットが発生するまでの事例です。通常であれば、ロスカット機能はレートが98.9583円になった時点で発動します。しかし急激な相場状況等により98.9583円から下側にかい離したレートで発動する場合があります。必ずしも証拠金維持率が100%の時点でロスカットが執行されるわけではありません。

 

ロスカットを防止する方法

このページの冒頭では、ロスカットが損失の拡大を防ぎ、最低限の資金を温存する役割を果たすと述べました。しかしそれはあくまで最低限の資産であり、大きな損失に変わりはありません。ロスカットはできることなら避けたいものであり、安定的にトレードをしている優秀なトレーダーほどロスカットを避ける能力を持っています。では、どのようにしてロスカットを回避できるのでしょうか。ここではロスカットを防ぐ方法についてを解説します。

実効レバレッジを低く設定する

実効レバレッジ=保有ポジション評価額(ポジション保有数×現在レート)÷有効証拠金(預入資金+評価損益) 

「実効レバレッジを低く設定する」という意味について、先述の「ロスカットの発生事例」を用いて説明します。

この例では、100万円という口座資金で20万ドル(1ドル/100円)を買いました。この時の実行レバレッジは20倍となります。(100×20万円÷100万円)

レバレッジの上限値は25倍に設定されているため、この上限値を超過する含み損を保有することはできません。つまりロスカットが執行されます。自身のトレードにおいて「実行レバレッジは何倍か」を把握することは、大きな損失を抑えることに繋がり、トレードの安定化を図れます。

もし先ほど20万ドルを購入した場面で10万ドルの購入に抑えていたら、どうなっていたでしょうか。100万円の口座資金で10万ドル(1ドル/100円)を購入した場合、実行レバレッジは10倍となります。20万ドルのポジションを保有した場合は1.0417円の逆行でロスカットとなりましたが、10万ドルのポジションを保有した場合は、2.0834円の逆行でロスカットとなります。実行レバレッジを抑えるということは、失う資金を抑えることに繋がります。トレードに「絶対」はありません。思惑とは反対側に逆行することは常に起こりえることだと考えます。ポジションを適切に抑えられるようになり、たった一度の逆行で口座資金のほぼすべてを失うようなトレードを避けられるようになれば、FX取引きでの初心者の領域を卒業したと言えるかもしれません。

実効レバレッジに関しては、別ページ「レバレッジとは」で説明していますので、是非ご覧ください。(⇒レバレッジとは)

 

損切り設定をする

ポジションを建てる時に、あらかじめ損切りの注文も入れておくことも重要です。損切りは、ロスカットが執行される前にポジションを解消する方法です。自分で損切の値幅を決めるので、想定外の損失は防げるようにもなります。また、強制ロスカットではすべてのポジションが一斉に決済されてしまいますが、あらかじめ注文時に損切りの逆指値注文も入れておけば、ポジションごとに損切り決済されるので、利益が出ているポジションまで決済されてしまう心配もありません。

優秀なトレーダーほど、損切りを「トレードで避けられない必要経費」だと認識している傾向にあります。レートが思惑と逆行することは何度も起こります。安定的に収益を伸ばすトレーダーは、逆行したら適切に損切りを行い、淡々と次のトレードの準備をしています。数回の損切りによる損失を気にするのではなく、複数回のトレード結果から、自身のトレードの評価をしましょう。

 

ロスカットの注意点

・ロスカットは各取引口座ごとに計算されます。同一のFX会社において複数の口座を保有している場合、ある口座に資金があったとしても、それとは別の口座の資金によってはロスカットが発生する場合があります。

・必要証拠金はリアルタイムレートで計算されるので、レートが変動すれば必要証拠金も変動します。そのためロスカットラインも常に変動するため、注意が必要となります。

・ロスカットは証拠金維持率がロスカット水準に到達した場合に執行されますが、ロスカット水準となる価格での約定や損失額を保証するものではありません。流動性の低下などにより、ロスカットのための決済注文が約定しない場合があります。その場合は損失が拡大してしまうリスクがあり、預託された証拠金を上回る損失が発生する可能性が生じます。