PIVOTは大多数のトレーダーが意識しているインジケーターと言われ、エントリー及び利確・損切りの決済ポイントになりえるテクニカル分析です。この記事では、PIVOTの計算を含めた概要や、なぜ多くのトレーダーが意識していると言われているのか、そしてPIVOTを使用したトレード手法について解説を行います。
Contents
【PIVOT】概要説明
PIVOTの開発者について
開発者:J・ウェルズ・ワイルダー・ジュニア(J.Welles Wilder Jr.)
職業:テクニカルアナリスト
開発インジケーター:ATR(Average True Range),RSI(Relative Strength Index)等
PIVOTとは
PIVOTは直訳で「中心点」「要点」を意味しており、「DAILY PIVOT」「WEEKLY PIVOT」「MONTHLY PIVOT」があります。DAILY PIVOTは前日、WEEKLY PIVOTは前週、MONTHLY PIVOTは前月の「高値」「安値」「終値」を用いて算出します。後に詳細を解説しますが、「(高値+安値+終値)÷3」で算出されるのがPIVOT POINTであり、そのPIVOT POINTの上下にサポートラインとレジスタンスラインが算出されます。複数のサポート・レジスタンスラインの中心に基準線を置くことから、「PIVOT(中心)」という名称になったと考えられます。
PIVOTの特徴
[特徴①]前日(及び前週・前月)のデータから特定の計算式で算出されるため、世界中のトレーダーが同じものを見ることになります。移動平均線等のように、トレーダーによって設定値が異なることでラインが多様になることはありません。そしてトレンドラインや水平線ラインのようにトレーダーの裁量で変化が生じるものでもありません。
[特徴②]前日(及び前週・前月)のデータから当日(及び当週・当月)のチャートにラインを表示するため、トレーダー自身が見ているチャートの右側(未来)にラインが引かれます。多くのインジケーターは過去の値動きを分析して可視化するものであるため、チャートを見た時点から過去にしか分析は及びません。
[注意点]PIVOTは高値・安値・終値で計算されるため、チャートの日付切替の設定値によってはラインがかわります。PIVOTを取り入れたトレードをする場合は、ニューヨークのクローズと日付の切り替えが同じになる「GMT+2.0(夏時間:+3.0)」の使用を推奨します。
PIVOTの計算方法
次にPIVOTの計算方法を解説します。下の図はPIVOT(DAILY PIVOT)です。PIVOTには「PIVOT POINT」を中心として、その上側にR(レジスタンス)1,R2,R3があり、下側にはS(サポート)1,S2,S3があります。
DAILY PIVOTの計算方法
計算で使用する値:前日高値 前日安値 前日終値
P=(前日高値+前日安値+前日終値)÷3
R1=2P-前日安値
R2=P+前日高値-前日安値
R3=2P-2前日安値+前日高値
S1=2P-前日高値
S2=P-前日高値+前日安値
S3=2P-S前日高値+前日安値
計算式を見てわかるように、当日のP(PIVOT POINT)を中心そしてR1,R2,R3及びS1,S,2S3が計算されています。前日の終値はP(PIVOT POINT)の計算にのみ使用され、それ以外はすべて前日高値及び前日安値が用いられます。
WEEKLY PIVOTやMONTHLY PIVOTの場合は、上記の計算式と同様に前週及び前月の高値・安値・終値を用いて計算します。
PIVOTを活用したトレード手法について
PIVOTで反応する値動き
PIVOTは「大多数の人間が同じラインを見ている」と言われても、どの程度反応しているのかイメージができない人もいると思います。そのためここでは、無作為に切り取ったユーロドル15分足にピボットを表示させ、どの程度反発しているか数えてみたいと思います。
この図はユーロドル15分足の5日間分のデータになります。この5日間において、PIVOTで反発を見せた箇所(赤○)は合計で21箇所あります。また、このPIVOTはサポート及びレジスタンスラインやトレンドラインと違うため、全員が同じラインを見ることになります。これだけ複数の箇所において反発しているのは、大多数の人間、及び何らかのトレードシステムの決済ロジックにピボットが活用されている可能性があると考えます。何度も機能したラインがあったとして、そこには大型のサポートラインがあったとしても、実はPIVOTがそこで機能していたケースも多々あります。PIVOTを取り入れることで、水平線をチャート上に引くことがなくなるかもしれません。
※DOT:DAILY DASH:WEEKLY SOLID:MONTHLY
【PIVOTを使用したトレード手法】スキャルピングについて
PIVOTがよく反発するラインであることは紹介しました。では次に、その反発する性質をどのように活用するかがポイントになります。この記事ではPIVOTをスキャルピングに活用する方法についてを解説します。
上の図はユーロドル5分足にPIVOTと240期間SMAを表示させたチャートです。(240期間を表示させたのは1時間足20期間SMAと同等のSMAを環境認識として使用したためです)
スキャルピングのメインロジックをPIVOTでの反発として、そのフィルターに5分足240期間SMAの傾きでのトレンド判定を追加したものです。240期間SMAが上向きの場合はロング戦略、下向きの場合はショート戦略として、PIVOTへの接触でエントリーをするとします。
上記のロジックの場合は図の赤○でエントリーをすることになり、利益を残せる結果となります。利確・損切り決済のロジックを細かく指定していないため明確な数値は提示できませんが、数PIPSを抜くスキャルピングにおいて高確率で反発するPIVOTは相性が良いと考えます。
【PIVOTを使用したトレード手法】注意点について
PIVOTをメインロジックとしたトレード手法を組み立てる場合の注意点として、何らかのテクニカル分析をフィルターとして追加することを推奨します。それはPIVOTがトレンドの判定を含む分析に向いていないことが理由です。そしてこの弱点はSMA等のトレンド系インジケーターをフィルターとして活用することで補うことができると考えます。(そのため先ほどのスキャルピングのトレードロジックにおいても240期間SMAを追加しています。)
上の図は、ある日のユーロドル15分足です。大きな上昇トレンドになっており、買い目線でトレードをしていたトレーダーが利益を残せた相場になっています。様々な教材において「R1で反発を狙ったショート、さらにR2でも反発を狙ったショート」という内容を目にします。しかしその戦略は推奨できません。上の図のような相場においてR1、及びR2でショートエントリーをした場合は損失が生じるケースが多いと考えます。何らかのテクニカル分析をフィルターとして追加した上で、トレンドに対して順行する形でのエントリーをする形が望ましいです。(もちろんトレンドへの逆張りで安定的に利益を伸ばしているトレーダーも多く存在しています)
また、もしもトレンド系インジケーター等を取り入れずにPIVOT単体でのトレードを検討する場合は、トレンドの判定にPIVOT POINTの位置を前日と比較することが有効です。PIVOT POINTは前日の高値・安値・終値の平均値を意味するため、前日より当日が上にあったら上昇相場、下にあったら下降相場という判断も可能となります。
各トレーダーによって掛けるフィルターは多様であり、そこに個性が生まれます。今回はSMAをフィルターに選択しましたが、この記事を読んでくれた皆様も、自身が好きなインジケーターをフィルターとして試してみて下さい。
【PIVOT】のまとめ
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。PIVOTの高頻度で反発する特性を活かし、スキャルピングやデイトレードでの活用方法として参考になればうれしいです。最後にPIVOTの要点を箇条書きにまとめてこの記事を終わります。
・PIVOTが高頻度で反発する理由は、大多数のトレーダーが同じラインを見る為である。
・複数回反発した水平線ラインは、PIVOTによるものの場合もある。
・PIVOTを取り入れたトレードをする場合、チャートの時間設定はGMT+2.0(夏:GMT+3.0)が推奨される。(ニューヨーク市場のクローズと日足のクローズが同タイミングに揃うため、この設定が最も多くのトレーダーに採用されているとの見方があります)
・PIVOTをメインロジックとしたトレードでは、トレンド系のテクニカル分析をフィルターとして追加することが推奨される。
※当サイトで使用しているPIVOTは、当サイトが独自にプログラムを組み立てたものになります。一般に流通しているものとの違いは、DAILY及びWEEKLY、MONTHLYの複数期間のPIVOTを同時に表示することが可能な点です。また、それに加えてラインの種類をDOT:DAILY、DASH:WEEKLY、SOLID:MONTHLYとすることで、それぞれのPIVOTが容易に識別できる工夫をしてあります。一般的には各証券会社のMT4にPIVOTは搭載されていませんので、ご注意頂けますよう宜しくお願い致します。