ダウ理論とは、多くののテクニカル分析の根底にある非常に重要な理論です。1世紀以上も前に提唱された理論ですが、今でも多くのトレーダーから支持を集めています。ダウ理論は6つの基本原則で構成されており、この記事ではそれぞれの原則についての解説を行います。
Contents
【ダウ理論】概要説明
ダウ理論-提唱者について
提唱者:チャールズ・ヘンリー・ダウ(Charles Henry Dow)(1851/11/6-1902/12/4)
職業:ジャーナリスト 証券アナリスト
ダウ理論-基本原則について
ダウ理論は以下の6つの基本原則で構成されています。
①市場には3種類のトレンド(短期・中期・長期)がある。
②トレンドは3段階に分かれる。
③価格(平均株価)はすべての事象(公開情報)を織り込み済みである。
④価格は相互に確認される必要がある。
⑤トレンドは出来高(取引高)でも確認されなければならない。
⑥トレンドは明確な反転シグナルが発生するまで継続する。
それでは、それぞれの基本原則についてを下記で解説します。
【ダウ理論】①市場には3種類のトレンド(短期・中期・長期)がある
一般的には短期トレンドを数分から1週間、中期トレンドを1週間から数か月、長期トレンドを1年から数年に分類しています。
短期トレンド
数分から数時間のトレンドを示します。1時間足チャートより小さい時間足のチャートで確認する規模のトレンドで、スキャルピングやデイトレードを行うトレーダーが注目しています。
中期トレンド
1週間から数か月のトレンドを示します。4時間足から日足チャート前後のチャートで確認する規模のトレンドで、スイングトレードを行うトレーダーが注目しています。
長期トレンド
1年から数年のトレンドを示します。週足・月足チャートで確認する規模のトレンドで、ポジションを長期保有するトレーダーが注目しています。
上の図は2020年5月のドル円1時間足チャートです。水色で示した部分は短期的な下降トレンドとなっていますが、中期的に見れば上昇トレンドの一時的な戻しを意味しています。また、中期トレンドでは上昇トレンドだったとしても、長期的な目線で見ればレンジの範囲内に位置していることになります。相場には波があり、「長期的に見れば上昇トレンド中であるものの、短期的には下降トレンド中である」といったように、見ている時間足の規模によって波の方向性が違う性質があります。
【ダウ理論】②トレンドは3段階に分かれる
第1段階-先行期
「市場に精通している先行型の投資家が、ある銘柄において上昇前にポジションを構築する段階。」
FXのチャートでは、上昇トレンドになる前段階で何らかの上昇シグナルを捉えた先行型のトレーダーがポジションを構築する段階です。上昇トレンドの先行期に反応するためのノウハウを持ったトレーダーはこの時点でエントリーすることが可能です。ただし注意点として、思惑の方向にトレンドが発生しなかった場合に損失を被るリスクを負うことになります。
第2期-追随期
「多くの市場関係者が市場に先行型の投資家の動向に気付き、そのトレンドに参入すること。」
先行期にポジションを構築したトレーダーの動向に反応する形で、他のトレーダーが参入します。これらの途中から参入したきたトレーダーのエントリーによって、トレンドは加速します。先行期と比較して一方方向に伸びやすい性質があるため、多くのトレーダーがテクニックを駆使してこの「追随期」に乗ろうとしています。
第3期-利食い期
「投機が過剰になると保有していたポジションを清算するトレーダーが出現する。」
トレンドで利益を伸ばしたトレーダーがポジションを清算する動きに加え、反対方向へのトレンドを狙うトレーダーの参入が、それまで伸びていたトレンドの終焉を誘発します。追随期で伸びた状態のトレンドは、誰が見ても明確なトレンドとしてチャート上に現れています。ここでさらにトレンド方向にエントリーをした場合、天井での「買い注文」となってしまうケースがあり、結果的に「高値掴み」による損失を被る可能性があります。
「利食い期」は、反対方向へのトレンドの「先行期」に入る段階であり、それが「追随期」へとつながります。収益を伸ばすためにはまず、「先行」「追随」「利食い」の3段階すべてをねらうのではなく、「追随期」に反応するためのテクニックを磨くことが効率的だと考えています。
【ダウ理論】③価格(平均株価)はすべての事象(公開情報)を織り込み済みである。
例えば株価は、企業の業績と経済の状況、経済指標等のファンダメンタルズ要素を受けています。日々企業の株価が変動するのは、これらの要素が影響を与えているためです。この時、「経済状況やファンダメンタルが値動きに影響を与えている」を反対に捉え、「値動きによってファンダメンタルズ等の説明は可能である」としています。
つまり、未来の価格を判断するために必要なのはテクニカルな分析であり、経済指標等の予想は重要度が低いことを表しています。
【ダウ理論】④価格は相互に確認される必要がある。
異なった指数の相関関係を確認するアイデアは今日でも多くのトレーダーに支持されています。株取引きでは日経平均株価、NYダウ平均株価等の指数を示しますが、FXの場合では通貨ペアの相関に該当します。
上の図は、2020年6月24日と25日の15分足チャートで、左側がユーロドル、右側がドル円になります。
左側のユーロドルは下降トレンドなのに対して、右側のドル円は上昇トレンドです。この時点において両通貨ペアは相関関係にあることになります。ユーロドルのレートが下降するということは、この通貨ペアの高安を言語化すると「ユーロが安くてドルが高い」となります。そしてドル円のレートが上昇するということは、「ドルが高くて円が安い」となります。両通貨ペアにおいて、共に「ドルが高い」状態であり、相関関係にあると説明できます。
通貨ペアの見方については「円安・円高とは」で解説していますので、是非ご覧ください。(⇒円安・円高とは)
経済指標や何らかの金融トラブル等によって1つの通貨のみが単独で大きく動く時に、この相関関係が崩れる場合があります。このように複数の通貨ペアにおいて相関関係があるかに注目することは、相場の状況や安定性を判断する上で検討材料になると考えられています。
【ダウ理論】⑤トレンドは出来高(取引高)でも確認されなければならない
出来高を伴わない値動きは、大きく伸びる前段階の小さなトレンドで終焉を迎える等、トレーダー自身の思惑に沿った方向に進まない傾向にあります。また、大きな出来高のあったトレンドは、その終焉時に出来高が減少します。出来高の上下はトレンドの反転を検討する上で重要な要素となります。
【ダウ理論】⑥トレンドは明確な反転シグナルが発生するまで継続する
この原則は、他の原則と比較して最もトレードに重要な要素となります。
ダウ理論では、高値と安値の切り上げが継続していると上昇トレンド(上図の左側)、高値と安値の切り下げが継続していると下降トレンド(上図の右側)と判断します。この切り上げと切り下げが継続する限りトレンドは継続中と考え、崩れた時にトレンドの終焉と捉えます。
上の図は、ダウ理論「高値と安値の切り上げ」による上昇トレンドが終焉した様子を示したものです。高値④において高値更新の失敗を確定させてのは、安値④の出現です。この安値④が安値③を下に更新せず、高値④が高値③を上に更新していれば、上昇トレンドは継続していました。「高値切り上げ失敗と、安値の切り下げ」が、上昇トレンドの終焉と判断できます。また、下降トレンドの場合は上昇トレンドと反対で、「安値切り下げ失敗と、高値の切り上げ」が下降トレンドの終焉の判断材料となります。
まとめ
ダウ理論は6つの基本原則で構成されています。
①市場には3種類のトレンド(短期・中期・長期)がある。
②トレンドは3段階に分かれる。
③価格(平均株価)はすべての事象(公開情報)を織り込み済みである。
④価格は相互に確認される必要がある。
⑤トレンドは出来高(取引高)でも確認されなければならない。
⑥トレンドは明確な反転シグナルが発生するまで継続する。
それぞれが重要な要素となっていますが、特に重要と考えられているのは⑥の「トレンドは明確な反転シグナルが発生するまで継続する」という考え方です。そしてトレンドには「先行」「追随」「利食い」の3段階があり、「短期」「中期」「長期」の規模に分類されます。
「ダウ理論」はチャートの特性を的確にまとめられており、世界中のトレーダーが自身のトレードにおいて基礎的な要素として取り入れています。そして大多数の人間がダウ理論を意識するからこそ、チャート上に現れやすくなります。皆様も自身のトレード手法を構築する時に、是非参考にして下さい。